子宮は産むためだけの臓器ではありません
未だに、「すでに子供を産んでいるから、子宮は取ってもいいですね」と子宮の全摘を説得する医師も数多くいます。
これに限らず、子宮の治療をめぐる医者の見解には、患者さんを惑わせる不確定要素が多すぎるように思われます。
子宮は子供を産むためにだけある臓器ではありません。子宮を全摘してしまうと、本来女性特有の出産のための骨盤腔が存在する為、子宮周辺の靭帯が短弱し、筋肉の組織の支えが弱くなり、その結果、更年期を早め、内臓下垂を起し易く、子宮からの、分泌液もなく、性交困難、腹痛や膀胱炎、排尿障害、慢性膣炎、尿失禁、骨粗鬆症、血栓形成、心身症、うつ病、の引き金にもなるのです。
子宮筋腫とは
子宮筋腫は子宮の筋肉の一部にこぶ(腫瘍)ができ、それが成長した状態をいいます。
こぶ自体は子宮癌のような悪性の腫瘍とは違い、良性であるといわれていますが、10年、20年の長い年月をかけて除々に大きくなるため、気がついた時にはメロンほどの大きさに成長しているケースもあります。正常な子宮は鶏の卵とほぼ同じ大きさですから、その何十倍にも成長してしまうわけです。
子宮にこのこぶができてしまうと、生理の時には月経過多、下腹痛、腰痛などの月経困難といわれる症状が起こり、日常的にも不正出血、貧血、めまい、立ちくらみなどが起きやすくなります。不妊の大きな要因ともいわれています。
このように、女性だけに備わった臓器・子宮にひとたび筋腫ができてしまうと、肉体的な苦痛を伴うばかりでなく、若い女性や子供が欲しい女性にとっては結婚、出産といった女性の一生をも左右することになるのです。
子宮筋腫は薬では完治しません
現在、子宮筋腫の治療は、軽症ならば「更年期になれば治るから様子を見ましょう」と貧血改善薬、ホルモン剤、経口避妊薬の投与などが一般に行われています。
これらの治療によって、多くの方は、一過性に小さくなると言われたり、生理が止まって、治っていると思っていらっしゃるようです。しかし、これらの治療法では完治は望めません。また、薬剤を長期間使用できず問題を発生することが多いのです。
晩婚女性の多い現在、結婚して早く子供がほしいという念願に”様子を見ましょう”、”更年期になれば治る”、その言葉に自分の一生の問題を託すことは私には到底理解できません。
残念ながら、女性の卵巣機能は40歳になるとだいぶ機能低下が進みます。初診時に病気といわれた子宮の腫瘍をできるだけ早く摘出し、不妊の原因を除去し、妊娠可能な子宮に戻さなければ、女性の最も重要な生殖年齢期を失うことになるからです。
子宮と卵巣は一体
「卵巣を残せば、子宮を取ってもホルモン的には大丈夫」との説明を受けて、全摘手術を受ける患者さんも多くいます。しかし、卵巣を養っている大半の血管は子宮サイドにあり、そこを切断すれば早かれ遅かれ卵巣は退化して、ドライフラワーのようになってしまうのです。
子宮と卵巣は一体のものであり、可能な限り、一緒に保存することが理想だと思います。
子宮保存手術について
子宮筋腫は、30~40歳代の女性の20%が罹患しているといわれるほど、極めてポピュラーな疾患です。 子宮筋腫にかかると、子供ができにくい、流早産しやすい、過多月経、月経困難症、月経痛、腰痛、下腹痛、腹部圧迫感、不正出血の他、めまい、立ちくらみなどいわゆる貧血症状などさまざまな訴えをもちます。 筋腫のできる場所によっては、大きなものでも無症状のものもあります。 子宮筋腫は長年、「摘出」を原則とされてきましたが、「保存」が可能とされる時代へと変わってきています。
中年以降ご婦人の病気と思われがちですが、実は30代、40代の女性に多く、この層が全体の8割を占めています。 20代の未婚女性の患者も決して珍しくありません。
真の子宮温存術とは
私達はこう考えています。
「本当の子宮温存術とは,子宮の機能まで温存することである。」
子宮は妊娠し易い様に、正常では前に傾いており、またトランポリンのように多くの靭帯というコラーゲンの線維に囲まれて存在しています。
筋腫、腺筋症などで膨れ上がった、硬く、動きの悪い子宮は、周りの靭帯を前後・左右に傾かせ、引っ張るために、骨盤の筋肉や腹膜まで巻き込むので、それが下腹部痛の原因にもなるし、子宮のもつ自然なぜん動運動(妊娠しやすいように精子を上まで運ぶ動き)も失われるのです。
しかし、ご安心ください。どれほど膨れ上がった子宮でも、手術を正確に行うことで、ほぼ正常の大きさに戻すことができます。 また、きちんと手術を行った場合、その子宮はぜん動を再開します。
(ご存知でしたか?子宮は精子を受け入れるためにぜん動運動をおこなっています。(参考:メディカルアイ)筋腫があると蠕動が妨げられるのがよくわかります)
私達は、このように子宮本来のもつ機能まで温存することを目的としています。
このことは術前、術後のMRI検査をして頂きますのでそこで確認していただけます。
このように細かい事にこだわる意味は術後に妊娠された方々の声を聞いていただくとご納得いただけるでしょう。
当院では手術を受けられた方皆様に、20数ページにわたるカルテ内容、検査、手術、麻酔ノートに至るまで全てお渡ししております。
「様子を見ましょう」では治らない
生理痛に悩む女性のなかには、子宮の病気を疑いながら、子宮筋腫と腺筋症(内性子宮内膜症)の関係がよくわからないという人もいます。
子宮筋腫と腺筋症はともに子宮の病気であり、症状も似ていることから同じものと考えがちですが、両者は全く別の病気で、病気の重度の面では筋腫より腺筋症のほうが深刻です。
また、筋腫から腺筋症に、あるいは腺筋症から筋腫に移行することはありますか、とよく質問されますが、移行することはありません。一般的に両者が合併していることも多いのでそのような印象をもたれるのでしょう。
生理痛の原因として筋腫が見つかった場合、たいていの患者さんはまずスプレキュアなどのホルモン治療を受けます。しかし、ホルモン剤によって筋腫を小型化することは期待できるとしても、筋腫そのものから逃れることはできず、病気を長期に引き延ばすにすぎません。
多くの婦人科の医師は「様子を見ましょう」と言いますが、子宮筋腫や腺筋症は、様子を見ているうちに治ったり、症状が軽減するような内容の病気ではないのです。
分娩を希望しない場合は全摘をしてもいいのでしょうか?
女性の骨盤には分娩の為に骨盤腔という大きな穴があいています。
下に支えるものがないのですから、その分、子宮の周りには多くの靭帯や筋肉群が発達しています。
子宮を全摘するということは、その子宮を中心として発達している骨盤の中の筋肉、靭帯のバランスが全部狂うことを意味します。
これにより内臓、腸の重みで頻尿(トイレが近い)や尿もれ、排尿困難、便秘などの症状が出ます。
また、子宮はホルモンの標的臓器ではないので、とってもホルモンには影響がありませんといったことがよくいわれていますが、決してそんな事はありません!
子宮動脈と卵巣動脈は非常に密接につながっています。子宮を全摘すると、卵巣にいく血流は大きく低下します。
その結果、卵巣機能は低下、更年期が早まります。また、子宮の周りの筋肉は女性ホルモンの影響を受けていますので、そこにも影響がおよびます。
それだけではありません。膣の上の部分で切断される為、容積が減少し、壁が薄くなります。子宮からの液体がないので膣自浄作用が低下し、感染を起こしやすくなります。
大腸菌感染を起こすと、悪臭をともなうおりものもでます。
性交痛が出たり、心理的に性欲減退しますし、不眠、情緒不安定になることもあります。
全摘術の代償がときにはかなり高くつくのです。
貧血の大部分は鉄欠乏性貧血
患者さんの多くは、月経過多、下腹痛などとともに貧血の症状を訴えます。そこで、貧血とはどのようなものなのかについて少し詳しくお話しましょう。
貧血とは赤血球が減少している状態をいいますが、その原因としては多くのことが考えられます。まず、その成因を速やかに究明し、確定することが大事です。
貧血が起きる主な原因には・・・
(1)骨髄における赤血球系細胞の産生低下
(2)末梢血、組織における赤血球の破壊が高進(溶血など)
(3)血行中からの失血、出血
などがあります。
日常多く見られる貧血の大部分は鉄欠乏性貧血で、圧倒的に女性に多いのが特徴です。貧血がある場合、中年女性ではまず子宮筋腫、腺筋症(子宮内膜症)を疑い、男性では癌性貧血を疑うといわれるほどです。
貧血の症状は、次のようないろいろなかたちで現れます。
(1)心循環器と呼吸器の所見…労作時に多い動悸と息切れ
(2)皮膚粘膜の所見…皮膚の蒼白
(3)神経筋の所見…頭痛、めまい、耳鳴り、失神、暗点、集中力欠如、傾眠、脱力感、疲労感など
(4)消化器の所見…食欲不振、下痢、便秘
(5)生殖、泌尿器の所見…軽度の蛋白尿、無月経、性欲減退
(6)代謝の所見…基礎代謝が高進する
(7)発熱…微熱
特に女性の子宮出血で最も多い鉄欠乏性貧血の臨床症状としては、(1)貧血による酸素欠乏の症状(動悸と息切れ、めまい)、
(2)酵素鉄蛋白の減少による皮膚粘膜の症状(皮膚の蒼白)、
以上の2つがあります。
鉄欠乏性貧血はゆっくり進行することが多いため、人体が貧血に慣らされて自覚症状がとらえにくいという特徴があります。
貧血による酸素欠乏の症状はかなり進行してから自覚することが多いようです。
貧血はどうして起きるのか
赤血球に含まれるヘモグロビンは、肺の毛細血管の中で酸素を受け取り、これを組織に運搬する働きをしています。したがって、慢性的な子宮出血で失血した状態が続くと、赤血球に含まれるヘモグロビンが減少し、その結果、酸素の運搬機能に障害が起こり、人体の組織、臓器は低酸素状態、つまり酸欠をきたすことになります。
そうした状態が慢性化、長期化すると人体の組織や臓器は機能障害を起こし、上記のようないろいろな器官で症状が現れるのです。これは健康とはほど遠い状態であり、自覚症状が出た時には貧血はかなり重症であると考えてよいでしょう。
恥ずかしがらずに受診を
生理痛がひどいという悩みをもつ女性のなかには、もしかしたら子宮筋腫か内膜症では…と内心不安に思いながら、なかなか婦人科に行く勇気がなくて、受診を一日延ばしにしている人もいるようです。
婦人科の受診をためらわせるもののひとつに内診がありますが、当クリニックの診察では必ずしも婦人科的な内診を必要としません。内診するまでもなく、腹部からの超音波診断やMRI画像検査だけで、かなり確実な診断がつくものです。
その一方で、生理痛を病気によるものだとは考えなかったと語る患者様もいらっしゃいますが、生理痛がひどいということは何らかの病気が進行しているというサインです。
受診するのが恥ずかしいからといって我慢しているうちに症状は年々ひどくなり、あとで後悔することになりかねません。将来につながる自分の健康と幸せのために、ぜひ勇気を出して受診してください。
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